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事象選択述語辞書

事象のモダリティや事実性を決定する上で,後続する述語が重要な要素となります.例えば,

  • 彼は発言するのを忘れた。

という文の場合,「忘れた」という表現の存在により,「発言する」という事象は実際には起こっていないという解釈ができます.

  • 彼が発言するのを妨げた。

という文の場合,「妨げた」という表現の存在により,「発言する」という事象は実際に起こっておらず,「発言する」という事象に対してネガティブな働きかけをしている,という解釈ができます.

本辞書は,「忘れる」や「妨げる」のような,モダリティおよび事実性に影響を与える述語(事象選択述語と呼びます)を収録した辞書です.分類語彙表に収録されている述語を中心に,8,523述語を収録しています.

サンプル

以下に,本辞書に収録された情報のサンプルを掲載します.

述語直前の事象の時制述語自身の肯否極性真偽判断価値判断評価極性
忘れる未来肯定不成立--
否定成立--
非未来肯定成立--
否定成立--
妨げる未来肯定不成立働きかけネガティブ
否定成立許可ポジティブ
非未来肯定x--
否定x--

これは,格にとる事象に対して,どのような影響を与えるかを示しており,以下の例文であれば,「発言する」に対して「忘れる」「妨げる」といった述語がどのような影響を与えるかを示しています.表中のxは,例文7,8のように意味的にその使われ方がされないことを示しており,-は特に影響を与えないことを示しています.

  1. 彼は発言するのを忘れた。
  2. 彼は発言するのを忘れなかった。
  3. 彼は発言したのを忘れた。
  4. 彼は発言したのを忘れなかった。
  5. 彼が発言するのを妨げた。
  6. 彼が発言するのを妨げなかった。
  7. ? 彼が発言したのを妨げた。
  8. ? 彼が発言したのを妨げなかった。

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参考文献

  1. 江口萌, 松吉俊, 佐尾ちとせ, 乾健太郎, 松本裕治.モダリティ、真偽情報、価値情報を統合した拡張モダリティ解析.言語処理学会第16回年次大会論文集, pp.852-855, March 2010.

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